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2人の幸せな「その後」を想像したくなる映画

 「Elvis has left the building」。直訳すれば「エルヴィスは建物を出た」。楽しいことはもう終わり、という意味で使われる英語の言い回しである。1956年、エルヴィス・プレスリーのショーが終わった後、会場をなかなか去ろうとしない女性たちにディスクジョッキーが発した言葉が元だ。本作ではこのフレーズがカギとなっている。

 現代のパリ。公園の木の手入れをしたり、アパートの管理人をしたり、自由な生活を送る24歳のダヴィッドには英語教師でシングルマザーの姉サンドリーヌがいる。彼らの両親は幼い頃に離婚、ずっと2人で寄りそって生きてきた、という歴史があるのだろう、2人は非常に仲の良い姉弟である。ダヴィッドはサンドリーヌの7歳になる娘アマンダの面倒もよく見ている。あるときダヴィッドは、ボルドーからやってきたピアノ教師レナにアパートを紹介、恋仲になる。レナはアマンダにピアノを教えるようになり、家族ぐるみで仲良くなる。しかし悲劇は起こった。パリでテロが発生、サンドリーヌは亡くなり、レナは右手を負傷してしまう。

 ミカエル・アース監督は、突然愛する人を失ってしまったことの悲しみや戸惑い、そこから徐々に立ち直っていく"アマンダと僕"の姿を、美しいパリの街並みとともに描いている。社会的メッセージを声高に主張するのではなく、彼らの生活を淡々と見つめることで、テロが起こった背景や人々の思いが心の奥深くに突きささる。映画のラスト、ダヴィッドとアマンダが、3人で行くはずだったロンドン・ウィンブルドンを訪れるシーンが素晴らしい。「エルヴィスはまだ建物にいる」。そんなエンディングに心が温まる。

YS58_cinema1.jpg©️2018 NORD-OUEST FILMS - ARTE FRANCE CINEMA

アマンダと僕 6月22日(土)公開
監督:ミカエル・アース
出演:ヴァンサン・ラコスト / イゾール・ミュルトリエ / ステイシー・マーティンほか
場所:YEBISU GARDEN CINEMA 恵比寿三越となり
TEL:0570-783-715
http://gardenplace.jp/cinema
 
文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。スチャダラパーの責任編集のインディーズ雑誌『余談』、せきしろの小説『海辺の週刊大衆』の文庫版などを編集。他に『GINZA』『POPEYE』『BRUTUS』『Fine』などでも執筆中。

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