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食べられない味、見えないから見える世界、 昔話の変人たち。

 本の中には、「読むことでしか食べられない」食がある。『私的読食録』は、堀江敏幸と角田光代というふたりの小説家が、さまざまな本の中の「食」について綴ったエッセイ集。食べたことないのに味を記憶している『小公女』の甘パン。描写を追うだけで酔った気分になる吉田健一の日本酒。言葉から生まれる味覚を、おなかいっぱい味わいたい。食べられない味があれば、見えないから見えてくる世界もある。

 『みえるとかみえないとか』は、宇宙飛行士の「ぼく」が主人公。降り立った星には、3つ目でうしろまで見える人もいれば、ぜんぶ見えない人もいて......。見えない人が見ている世界を、子どもの感性に寄り添いわかりやすくガイドしたこの絵本は、視覚障害者の世界の見え方を研究する伊藤亜紗の著作からインスピレーションを得てできたもの。読めば常識という名の心の壁がパラリとくずれ、世界の枠がぐいんと広がり、「みんなちょっとずつ違う」現実がクリアに見えてくる。

 古典や民話にも、普通と「違う」ために注目を集めた女の子たちがいた。『日本のヤバい女の子』は、かぐや姫、虫愛づる姫君、乙姫などエキセントリックな昔話の女の子たちの心情を、現代の視点から大胆に読み解いたエッセイ。秘密の機織りを見た男を祟った天女様も、仕事でテンパってるときに邪魔をされて「シバいていい?」となったのかも。「こんな本を待ってたの!」という千年の時を越えた女性たちの快哉が聞こえてくる一冊だ。


ys56_book01.jpg1.『 私的読食録』 堀江敏幸、角田光代 プレジデント社 ¥1,620


ys56_book02.jpg2.2.『みえるとかみえないとか』 さく・ヨシタケシンスケ そうだん・伊藤亜紗 アリス館 ¥1,512


ys56_book03.jpg3.『日本のヤバい女の子』 はらだ有彩 柏書房 ¥1,512

文・矢部智子
ライター。著書に『東京建築散歩』など。『私的読食録』で膝を打ったのは、家庭の食事に光を当てて「革命を起こした」のは向田邦子だ、という角田氏の評。家庭の味の文学史は、まだ始まったばかりなのだ。

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