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八代亜紀×小西康陽

タイムレスなジャズ・アルバムができるまで。

Photos by Katsumi Omori, Text by Tomoko Yabe

冬の長い夜を満たしてくれるジャズ・アルバム『夜のつづき』がリリースされた。歌うのは、"演歌の女王"八代亜紀。プロデュースは小西康陽。おふたりに、今なお輝きを失わないタイムレスな音楽について、語っていただきました。

―おふたりの出会いは?

八代 小西さんとは、2012年の『夜のアルバム』で初めてご一緒しました。私、子どもの頃からハスキーな声がコンプレックスだったんですね。でも、あるとき父がジュリー・ロンドンのレコードを買ってきてくれて。彼女がハスキーな声で楽しそうに歌うのを聴いて、「なんて素敵なんだろう、私も彼女みたいなクラブシンガーになりたい」と思い、10代でナイトクラブで歌いはじめました。だからスタンダードジャズは私の原点。それを小西さんがプロデュースしてくださるということで、わくわくしました。

小西 僕も、こんなに素晴らしいシンガーのアルバムを作るチャンスなんてそうそうないし、ジャズということで、すごくイマジネーションが広がりましたね。それで、八代さんが隣りで歌っているように感じるものを作りたいと思ったんです。

―そして5年後の今年10月、第二弾『夜のつづき』が発売に。

八代 1枚目は初々しさがあったけど、今回はもう信頼関係があるので、とにかくレコーディングが楽しくて。

小西 楽しい現場でした、ずっと。

八代 小西さんは「亜紀ちゃん」って呼ぶのね、私のこと(笑)。「この曲は、17歳の亜紀ちゃんでお願いしまーす」とかね。

小西 真似しなくていいじゃないですか(笑)。今回の選曲は、実は5年間ずっと考えていたんです。『夜のアルバム』は幸いにして大ヒットしたけれど、本当に八代さんが歌いたかった曲ってなんだったんだろうと。

八代 そうなんですね! 私は「ワークソング」にびっくりしました。黒人囚人の悲哀がテーマなんだけどカッコいい歌で、こういう曲を選んでくれたことが嬉しかったです。あと「指」ね! 「帰ってくれたら嬉しいわ」の「You'd be so nice〜」というフレーズを「指をからませ」と日本語訳されていて、ひっくり返りそうになりました。でもその遊び心が、小西さんらしい。

小西 八代さんは、どうやってもすごいから。多少冒険しても大丈夫だとわかったんです。あと、すごく譜面を大切にされますよね。僕がアレンジで勝手に2小節削ると「切ったわね?」って(笑)。あれは驚いた。

八代 私は、レコーディングで音を出す段階で歌が生まれると思っていて。どの歌にも違う女性が生きていて、歌い手はその代弁者なのね。だから、譜面を見なくても歌えるように、メロディーをピシッと頭に入れておく。それが私の哲学なんです。

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―八代さんの歌の魅力とは?

小西 とにかくマイクロフォンの使い方が完璧なんです。これほどマイクにのった声や歌をコントロールできてる人は、ほかにいないと思う。エジソンが録音システムをつくって以来、20世紀以降のポピュラー音楽を体現するような歌手だと思います。

八代 私は12歳のとき、父の会社が思うようにいかず苦悩しているのを見て、クラブシンガーになって家計を助けようと思ったんです。ただ問題は、ものすごくシャイで、人前で歌うことができなかったこと。シャイを治そうとバスガイドになったのに克服できなくて、泣いてばかりいました。そんなとき、知り合いに誘われて地元のキャバレーで歌うことになったんですね。スタンドマイクで歌ったら、私の声がエコーにのってフロアに流れて、お客様やお姉さんたちが全員立ち上がってチークダンスをはじめたの。そこで初めて気づいたんです。私、なんていい声なんだろうって。マイクが教えてくれた。そこからスタートしたんです。

小西 すばらしいエピソードですね。八代亜紀ストーリーとして、曲や映像にしたいな。

―収録曲はどれもタイムレスな名曲ですが、おふたりによって新しい命を吹き込まれたように感じます。

小西 自分で言うのは口幅ったいけれど、たとえば「黒い花びら」は昭和30年代の歌謡曲ですが、今回八代さんが歌って、さらにエバーグリーンな曲になったと思うんですよね。

八代 個性の強い曲なのに洒落ていて、時代を感じない、今の大人の歌になりましたよね。私は、歌の新しさって、誰かが引き出すものだと思うんです。だからプロデューサーさんに任せます。そして私も受けとめてトライする。そうすることで曲も歌も新しく更新されて、タイムレスなものになっていくように思います。

八代亜紀(やしろ あき)
東京・銀座でのクラブ歌手を経て1971年デビュー。「舟唄」「雨の慕情」等、数々のヒット曲を放ち「演歌の女王」と呼ばれる。近年はジャズやブルースなどジャンルを超えた活動にも注目が集まっている。

小西康陽(こにし やすはる)
作編曲家。DJ。1985年から90年代にかけて「ピチカート・ファイヴ」中心メンバーとして活躍。"渋谷系"ミュージックシーンの牽引役となる。解散後もプロデュースや作編曲を数多く手がけ精力的に活動中。

ys53_timelesstalk03.jpg八代亜紀『夜のつづき』(UNIVERSAL MUSIC JAPAN) ¥3,240
小西康陽プロデュースの本格ジャズ・アルバム第2弾。CDに加えて、アナログ盤も限定発売中。シンガー八代亜紀の原点を感じる1枚。

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