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冨永愛の"愛"のかたち。

3年間の休業期間を経て、昨秋カムバックを果たしたモデルの冨永愛さん。彼女の現在、過去、未来。そして、愛の物語。

Photos by Shunya Arai (YARD), Styling by Yoshiyuki SHimazu, Hair & Make by ITSUKI (UM), Text by Tomoko Yabe

いつもの街、なんでもない一日。けれど彼女がヒールを鳴らして歩き、ターンして、射るような視線をカメラに向けると、恵比寿の街がランウェイになった。

17歳で渡米。その後、数多のトップメゾンのコレクションで活躍し、アジア人モデルの先駆者となった冨永愛。彼女にとって恵比寿は、思い出深い街なのだという。

「17歳のとき、恵比寿ガーデンプレイスで行われたシャネルのショーに出演したことをよく憶えています。あの頃は、ザ・ガーデンホールで東京コレクションなどもやっていて。六本木ヒルズも東京ミッドタウンもまだなくて、ここは新しい時代のファッションの拠点というイメージでした。だから恵比寿とは、長いお付き合いなんです」

特集のテーマは「愛の物語」。「愛」という言葉から最初に思い浮かぶものについてたずねると、迷いなく「母親かな」と答えた。

「私の『愛』という名前は、母が『人に愛されるように、人を愛するように』と付けてくれた名前。小学生のときに、そう聞いたときはうれしかった。この名前のように生きていこう、と思いました」

母の手で育てられた少女は、時を経て、中学二年生の息子の母となった。ふとした瞬間に見せるやわらかな笑顔からも、母となった人の強さとやさしさが伝わってくる。

「息子への愛は、限りがない。幸せだなと感じることも多くなりました。息子と一緒のときは、ケンカしてても『こういうのも幸せだな』と思うし。まだまだ、子育てで悩むこともたくさんあるんですけどね」

20代をトップモデルとして駆け抜け、タレントとしてテレビやラジオでも活躍。そんな矢先、過労で倒れたことをきっかけに休業期間に入る。復帰を果たしたのは昨年秋。第一線から身を引いた3年間は、どんな日々を過ごしていたのだろうか。

「母親として生活していました。『いってらっしゃい』と送り出し、『おかえり』と迎えて。料理もつくりましたし、学校の活動にも積極的に参加しました。しっかり息子を見て、その成長を感じることができた時間でした。そうして子どもと向き合うことで、自分とも向き合えた。それまでの人生を振り返る時間にもなったんです」

息子への愛、母への愛、恋人への愛。それぞれの「愛」の違いについて聞いてみるとーー。

「うーん。むずかしいですね。家族への愛は、変化することはあっても消えるものではないと思う。でもそれが、恋人という他人になるとどうなんだろう。育てていくもの、とでも言うか......そこはまだわからない(笑)! もしかしたら、いくつになってもわからないのかも」

 

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尖っていた10代の自分も、今は愛おしいと思う。

2014年には、自叙伝『愛なんて 大っ嫌い』を上梓。そこには思春期のいじめや孤独感、ファッション業界の偏見などと闘い、「怒り」を原動力として生きてきた日々が、赤裸々に綴られている。あの頃の冨永さんにもし今、出会ったとしたら?

「尖ってましたからね。『いっちゃってる、この人』と思うでしょうね(笑)。でも今は、あの頃の自分を愛おしいと思うし、あんな子がいたらおもしろがると思う。あの頃の私を、まわりの大人たちがおもしろがってくれたように。今回、スタイリングしてくれた島津(由行)さんも、ヘアメイクのITSUKIとも、あの頃からの長い付き合いですが、制服の私をよく憶えていると言われます。みなさんの中では、いつまでもあのときの私のままらしい。実際、中身はあまり変わっていないと思います。経験を重ねた分、仕事への考え方は深まったけれど、違う点はそこくらい。『負けたくない』という感情はまだ私の中にあって、それが原動力になっている。そこに今、息子への愛がプラスされた感じです」

休んでいたときは、「仕事を辞めようとは思わなかったけど、復帰しようとも思っていなかった」と言う。それでも冨永愛は帰ってきた。彼女を動かしたのはもうひとつの「愛」、モデルという仕事への愛だ。

「もう一回モデルをやりたかった。3年間でリセットできて、よりこの仕事が好きになったんです。だから復帰後に初めてランウェイを歩いたときは、すごく幸せを感じました。モデルの仕事は、コンプレックスを武器に変え、装うことで主役になれた。ランウェイや撮影のライブ感、みんなとつくりあげる感じも好きです。でも根本的にモデルの何が好きかというと、自分を好きな自分を楽しめるからだと思う。自分を好きじゃないと、たぶんあんな顔して歩けないと思うから(笑)」

モデルとして生きること。「それが今の目標」と言葉を続ける。

「今」、モデルは多様化しています。私みたいに身長が高くなくてもできるし、ビッグサイズの人もいれば、90歳のモデルもいる。『こういうスタイルがモデルだ』という大前提があった時代とは違う。だからこそ私は私のスタイルで、モデルとはなんなのか追求していきたい。モデルの仕事を長く続けていくことが、これからの大きな挑戦だと思っています」

 

冨永 愛(とみなが あい)
モデル。17歳でNYコレクションに参加し一躍話題となり、以後約10年に渡り世界のトップモデルとして活躍。その後東京に拠点を移し、テレビやラジオでも活躍。モデル業と共に社会貢献活動など活躍の場を広げる。VOGUE JAPANウェブサイトにて書き下ろしエッセイを連載中。

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