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坂を下れば 第2話 豊神会の内藤さん

恵比寿新聞編集長 高橋ケンジの ”恵比寿00's 小説”

お神輿初心者の僕は、予備知識なしで取材に臨んだ。

 「神輿の取材してみない?」そう言われたのは恵比寿新聞創刊から2年目。弁当屋が夜になると立ち飲み屋になる3丁目の「たかちゃん」という店で、地元のオジサンたちと飲んでいる時だった。「実は担ぎ手不足でね...なんとか担ぎ手を増やしたいのだけど」。創刊後、鳴かず飛ばずの時期で新聞の運営に限界を感じていた時だった。「どれだけ力になれるかわかりませんが」と取材することになった。

 紹介してもらったのは恵比寿2丁目の「豊神会」。町会よりも歴史が古いという祭礼会だ。お神輿初心者の僕は予備知識なしで当日の取材に臨んだ。紹介されたのはお神輿の責任者でもある内藤さん。「火事と喧嘩は江戸の華」とは大違いのにこやかで温厚な方。初心者の僕に「帯はね、腰の下で巻くと粋なんだよ」とやさしく教えてくれた。

 祭りが始まった。神輿は街をめぐり氏神の氷川神社へと向かい、地元の神酒所に戻ってくる。沿道は拍手喝采。感動に包まれていた。だが、最後に大きな事件が。担ぎ手同士の喧嘩が勃発(普段は起きないのに)したのだ。場は一時騒然。すると内藤さんがいの一番に制止に入り、その場がおさまった。先ほどの温厚な内藤さんの目つきが変わり、別人のような鋭い目になっていた。こういう人がいるから街が守られているんだなと不思議と少し安心した。

 内藤さんの本職は畳屋さん。祭が終わっても街で会うと立ち話するような仲になっていた。「僕はしがない街の畳屋だけどお神輿だけは好きでねぇ。毎年楽しみなんだよ」と。そんな内藤さんは2018年に倒れられ、現在も自宅で療養中だ。内藤さん。今年はコロナで神輿があがりませんでした。みんなの神輿を担ぐ声を届けられなかったけど来年は必ずお届けしますね。だから内藤さんも頑張って。

今回の舞台
渋谷氷川神社例大祭
毎年9月中旬に開催。各拠点を出発した12基の神輿が街を練り歩き、渋谷氷川神社へ宮入する、街の絆を深める伝統行事だ。写真は2012年取材時の例大祭のもよう。
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当時豊神会の神輿責任者を務めていた内藤さん。



高橋ケンジ(たかはし けんじ)
『恵比寿新聞』編集長。2009年より恵比寿の情報ハブとして、また地域の人と人をつなぐ拠点としての役割を担ってきた。恵比寿の人・店・出来事をディープに取材し、日々発信し続けている。https://ebisufan.com/news/

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