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43歳の皇帝ペンギンがつなぐ命。

 南極の海の中を飛ぶように泳ぎ回る皇帝ペンギンは、冬の繁殖期になると陸に上がり100㎞内陸の「オアモック」を目指して歩き出す。「世界でもっとも過酷な子育て」をするために─。

 世界中で大ヒットした『皇帝ペンギン』(05)の新作である。前作は皇帝ペンギンファミリーの出産から子育ての1年をおうドュメンタリーだったが、今作は43歳のオスが主役。コロニーの最長老だ。自分とそんなに年の違わないペンギンが生きていることにまず驚愕するのだが、マイナス40度のブリザードが吹き荒れる地で、ときには仲間と体を寄せ合い温めながらも、産卵で体力を使い果たしたメスに代わり飲まず食わずで120日間卵を温め続ける姿に胸を突かれる。それが生きとし生けるものの本能とはいえ、神はなぜ彼らにそんな過酷な生を強いたのだろうと考えてしまう。

 ペンギンは進化の過程で翼が退化したといわれている。ただ、南極の過酷な環境においては、翼があるほうが優位なはずで、それは生物学者の間でも大きな謎だったという。近年の研究によれば、飛行するより海に潜るほうがエネルギー消費が少なく、海に餌場を求め潜水に特化したことで、泳ぎに適した形に翼を進化させた、という説が有力だという。

 そして、体をゆさゆさと揺らしながらヨチヨチトボトボと歩く彼らの姿を観るうちにふと気づく。地球温暖化が彼らの足もとを不安定にさせているのだと。本来、彼らは歩くことは得意ではない。その昔は南極の氷原を腹ばいになり飛ぶように滑って進んでいたに違いない。彼らの生を過酷にしたのは神ではない。私たち人間なのである。

 綿毛を脱ぎ捨て海へ「飛び立った」雛たちの未来が続くことを祈りたい。

cinema_01.gif© BONNE PIOCHE CINEMA PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy G ilardini

皇帝ペンギン ただいま 8月25日(土)公開
監督:リュック・ジャケ
場所:YEBISU GARDEN CINEMA 恵比寿三越となり
TEL:0570-783-715 http://gardenplace.jp/cinema

文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。スチャダラパー責任編集のインディーズ雑誌『余談』、せきしろの小説『海辺の週刊大衆』の文庫版などを編集。他に『GINZA』『POPEYE』『BRUTUS』『Fine』などでも執筆中。

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