YEBISU GARDEN PLACE

  • 文字の大きさ標準サイズ
  • 文字の大きさ拡大サイズ

YEBISU STYLE

online

窪みをたどって異次元へ。恵比寿スリバチ散歩。

東京は「窪み」に着目すると面白い!東京スリバチ学会会長の皆川典久さんと、地図にハマったライターの杉浦貴美子さんが恵比寿の窪みをめぐって歩きました。

Text by Tomoko Yabe, Photos by Kaoru Fukui

目黒通りから脇道に入ると出現するのがかつて「悪水溜」と呼ばれた池を中心とするスリバチ地形。タイムトリップ感満載の古びた煉瓦の遺構に遭遇する。(地図A)

ys54_geographicwalk_main02.jpg都心に広大な手付かずの緑地が残されている自然教育園もスリバチ地形の宝庫。この水生植物園付近はスリバチの底。(地図B

 ふだん何気なく歩いている恵比寿。実はこの街、起伏の宝庫なのです。地形ブームの立役者である皆川典久さん、無類の地図好きの杉浦貴美子さんと、恵比寿の地形をめぐります。

 今日は東京メトロ白金台駅から出発し、恵比寿ガーデンプレイスへ向かいます。目黒通りを渡り脇道を入るとさっそく、ゆるやかな坂道の光に窪地が。ここはかつて悪水溜と呼ばれた場所で、脇道の煉瓦の擁壁はその名残。そして坂の上からは、その奥に対岸の高台が見通せる。いわゆる「スリバチ」地形です。

 「この先に谷があるから、おりてまたのぼる坂になっている。V字型の谷ではなくて、スプーンですくったようなスリバチ状の谷が、東京にはたくさんあるんです」と皆川さん。

 来た道を戻り、次は目黒通りの脇道へ。坂を下りていくと、奥行き3メートルに満たない小さな家が電車のように連なる一帯が見えてきました。実はここは、江戸時代に開かれた三田用水の跡。「水路に添って家もカーブして建てられている。この光景はおもしろいですね」と杉浦さん。さらにその先には、蔦の絡まるコンクリートの遺構らしきものが。「これは用水路の断面です。ヱビスビールはこの三田用水から水を引いて作られていたんですよ」と皆川さん。幅1メートルほどの小さな遺構から、かつてこの地を潤した三田用水の水流が眼に浮かんできます。

 次に訪れたのは自然教育園。木々がうっそうと茂るここは、室町時代の白金長者の館跡を残した緑地。「園内には当時の土塁も残されていて、窪地に水源があり、水の流れで湧いているのがわかる。自然地形が残る貴重な場所です」と皆川さん。

 自然教育園を出て、次に向かったのは品川区上大崎付近。なだらかな坂をのぼった丘の上は、かつて長者丸と呼ばれた高級住宅地で、今も瀟洒な住宅が建ち並んでいます。

 「この丘の北側は、かつて路面電車が走っていたんですよ」と皆川さん。車の通りすら少ない静かな住宅地で、にわかには信じられませんが、「『東京時層地図』というアプリで100年前の古地図を見ると、たしかに線路がありますね」と杉浦さん。地図が教えてくれる歴史です。

 近くの川跡を歩き、ふと顔を上げると、目の前にガーデンプレイスの急峻な崖が。その階段をあがり振り返ると、谷底の木造住宅、丘の上の高層マンションがレイヤー状に重なる、奥行きのある空間が広がっていました。皆川さんが言葉を続けます。「隣り合っているのに、谷と丘では雰囲気がまったく違う。こんなコントラストの効いた眺めも、地形がつくった東京の風景なんです」

ys54_geographicwalk_main03.gif

ys54_geographicwalk_01.gif[左]憧れの街白金台にあるスリバチ地形。ここにかつて「悪水溜」と呼ばれる池があった。(地図C
[右]東大医科学研究所の境界壁には奇妙な出入り口が。こんな謎な光景に出会うのも楽しい。(地図D

ys54_geographicwalk_02.gif[左]「三田用水跡」。水路の断面が残されている。(地図E
[右]かつての水路に沿って歩くと小さな社が。「今里地蔵尊」とある。(地図F

ys54_geographicwalk_03.gif[左]勾配の違う路地が鋭角に交わる分岐。異界への入り口か。(地図G
[右]東京のスリバチ地形を知り尽くす皆川典久さんと、地図と地形に魅せられ街歩きを楽しむ杉浦貴美子さん。

ys54_geographicwalk_04.gif[左]長者丸と呼ばれた現在の上大崎2丁目界隈。このエリアの凹凸を形成した長者丸支流の暗渠があった。(地図H
[右]ゴールは恵比寿ガーデンプレイス。灯台もと暗し。ここにも壮大な人工スリバチがあったとは。(地図 I

 

2人の対談は次週(6/13)掲載予定!

YEBISU STYLE 最新号

YEBISU STYLE最新号は恵比寿ガーデンプレイス内各エリアで入手することができます。また、WEB上でもご覧いただくことができます。

最新号はこちら
ページTOP