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身勝手な男と女の悲劇が冷酷なまでに美しい。

 会社での立場ばかりを気にする夫、片時もスマホを手放せない妻、そんな両親の姿に心を痛める息子。いわゆる「ネグレクト」の話なのだが、アッパーミドルクラスの家族、というのが嫌味を増長させる。貧しさゆえの、教養がなかったから、というある種の「いいわけ」は一切ない。ただただ愛がないラブレス。自分自身が愛されることだけを求めた身勝手な男と女の悲劇である。

 モスクワ郊外のニュータウン。高層アパートの一室では離婚寸前の夫婦がお互いを罵り合っていた。夫は大企業で働くボリス、妻は美容サロンを経営するジェーニャ。夫婦には12歳になる一人息子アレクセイがいるが、どちらも息子を引き取りたいとは思っていない。それぞれに新しい恋人がいるため、アレクセイの存在が「めんどう」になってしまったのだ。そして、ある日、アレクセイが姿を消してしまう。

 監督・脚本は、ロシア映画の鬼才アンドレイ・ズビャギンツェフ。冷酷なまでの映像美に圧倒され、ぐいぐいと引き込まれる。ロシア映画というとゴツゴツとしたイメージがあるが、本作は部屋のインテリアやカメラワークが非常に「おしゃれ」だ。イングマール・ベイルマン風、というか、筆者的にはベイルマンに感化されたウディ・アレンの『インテリア』(78)を思い起こさせる。

 そして、物語の背後に流れるロシアの世情。映画は2012年から2015年までの出来事だが、その時期のロシアの状況がラジオやテレビから流れるニュースでよくわかる。さらにロシアでは、警察が行方不明者を捜査するのではなく(そんなことにかまっていられないという理由)、ボランティアが捜査をするというのも興味深い事実である。

y54_cinema.gif ©2017 NON-STOP PRODUCTIONS - WHY NOT PRODUCTIONS

ラブレス 4月7日(土)公開 【R15+】
監督: アンドレイ・ズビャギンツェフ
主演: マルヤーナ・スピヴァク、アレクセイ・ロズィン
場所: YEBISU GARDEN CINEMA (恵比寿三越となり)
TEL 0570-783-715 http://gardenplace.jp/cinema

文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。スチャダラパー責任編集のインディーズ雑誌『余談』、せきしろの小説『海辺の週刊大衆』の文庫版などを編集中。4月上旬に発売予定。他に『GINZA』『POPEYE』『BRUTUS』『Fine』などでも執筆。

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