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人をしあわせにする料理の力を信じて。

友里さんのお店「restaurant eatrip」にて。紘子さんはここで、年に数回お料理教室を開いている。次回開催などの告知はこちら。http://www.babajiji.com/



 主婦として、家族のために、また、家を訪れるお客様のために日々キッチンに立ってきた野村紘子さんにとって、料理とは思いやりや感謝を伝える手段なのだといいます。

 「私の料理の原点は母。料理上手なだけでなく、とてももてなし上手な人だったんです。戦前、戦中の物資がない時代でも、父が急に連れてきたお客様に対して嫌な顔ひとつせず、工夫してもてなしていました。たった3枚しかないシソの葉を上手に使って料理を彩ったり、魚の切り身が人数分ないとなると、ほぐして別の料理に作り変えて出したり。常に食べる相手のことを思いやっていました。母からもっとも影響を受けたのは、そういう"心"の部分ね」

 やがてそんな心は、紘子さんの娘であり、現在はフードディレクターとして活躍する野村友里さんに受け継がれます。

 「母は食材にお金をかけたりするのではなく、あるものを使って工夫してもてなすんです。主婦の知恵ですよね。私は厳しいプロの現場も体験していますが、それとは別の強さを一人の人間として教わったような気がします」と友里さん。

 そんな野村家の食卓を象徴する一品に「リンゴだらけのパウンドケーキ」(レシピ)があります。

 「50年以上、ほぼ同じレシピ。子供達が小さい頃、お友達を家に連れてきた時のおやつにもよく出していました。冷凍しておいてね。市販のお菓子より体にもいいでしょう?」

 忙しくても、急な来客でも、手作りにこだわってきた紘子さん。そこには「料理には人をしあわせにする力がある」という信念があります。「『おいしかった』が私のエネルギー源です。そう言っていただくと、次は何を作ろう?とすぐに思い始めてしまいます」

 料理をする上で、一番大切な心得ってなんでしょう?最後にこう質問すると、即座にこんな答えが返ってきました。

 「心を込めて作ること。それがすべてじゃない?」

野村家のタイムレスな道具たち
ys53_nomura02.jpg30年以上毎日のように愛用するポルシェデザインの鍋。「絶対に焦げ付かない。そして機能美としかいいようがないフォルム。いいものはいい、を実感する道具ですね」


ys53_nomura04.jpg20年ほど使っているほうろく。「使う直前にこれで胡麻を炒ると、香りが全然ちがうの」と紘子さん。今では作る人がいなくなり、同じものは手に入らないのだという。


ys53_nomura03.jpgひょうたん型の物相(抜き型)は、紘子さんがお祖母様から受け継いだもので、今では友里さんも使う。右はお母様のもので、これも今では入手できない貴重な道具。


ys53_nomura05.jpg書道と俳句が趣味だったというお義母様直筆の茶托と菓子皿。達筆な文字で季節ごとの自作の俳句が書かれている。「大切に次世代に引き継いでいきたいですね」




野村紘子(のむら ひろこ)
自宅でおもてなし料理を紹介するサロンを続けて30年以上。雑誌『ミセス』などでも活躍。著書『娘へ継ぐ味と心 消えないレセピ』(文化出版局)が「グルマン世界料理本大賞2016」を受賞。

野村友里(のむら ゆり)
料理人。2012年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン。近著に『おいしい手帖』(マガジンハウス)。年末には青山・スパイラルにて初の企画/監修の舞台「食の鼓動 -inner eatrip-」を控える。

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