YEBISU GARDEN PLACE

  • 文字の大きさ標準サイズ
  • 文字の大きさ拡大サイズ

YEBISU STYLE

online

ヴェンダースが詩的に描いた男と女の会話劇

 夏の日の午後。パリ郊外の小高い丘の上に建つメゾン・ド・カンパーニュ。ジュークボックスからはルー・リードの「パーフェクト・デイ」が流れ、書斎では作家が物思いにふけった様子でタイプライターに向かっている。木漏れ日が揺れる庭のテーブルには男と女。微妙な距離を保つ2人は、たぶん、付き合っていないが、過去には付き合っていたのかもしれない。彼らが会話を始める。男「どっちから始める?」。女「あなたよ。」。男「初めて男と寝たのは?」。ーー詩的な「男と女のさえずり」がこの映画の主題である。監督はこう言っている。「これは自分の意図が最終型に至った初めての映画だ」と。

 ヴィム・ヴェンダースの新作『アランフエスの麗しき日々』は、『ベルリン・天使の歌』(1988年)以来のコラボとなるペーター・ハントケの戯曲「夏のダイアローグ」を映像化したものだ。会話劇なので、登場するのは、初めてのセックスや子供時代のこと、男と女の違いについて、などを語り合う男(レダ・カテブ)と女(ソフィー・セミン)のみだが、映画のオリジナルとして、彼らの会話を創造しタイプライターに打ち込む作家(イェンス・ハルツ)と、作家がときおりかけるジュークボックスも登場する。映画の中盤、ニック・ケイヴがジュークボックスから飛び出したように、「イントゥ・マイ・アームス」をピアノで弾き語るシーンが素晴らしい。『ベルリン・天使の歌』でも、ダミエルがマリオンと出会うライブシーンでニックが登場していた。

 ちなみに、撮影を行ったメゾンは、ベル・エポック時代の女優サラ・ベルナールが暮らした家。自分もこんな庭で誰かと語り合ってみたい。でも一体何を話すだろう。昨日食べたごはんのことかな。

ys53_cinema_01.png ©2016 ALFAMA FILMS PRODUCITION-NEUE ROAD MOVIES

アランフエスの麗しき日々[12月16日(土)公開]
監督: ヴィム・ベンダース
主演: レダ・カテヴ、ソフィー・セミン、イェンス・ハルツ、ニック・ケイヴ
場所: YEBISU GARDEN CINEMA (恵比寿三越となり)
TEL 0570-783-715 http://gardenplace.jp/cinema

文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。松本隆対談集『風待茶房』、文筆家せきしろの自伝的小説『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』を編集。マイク・ミルズの映画『20センチュリー・ウーマン』の劇場用パンフレットも編集。

YEBISU STYLE 最新号

YEBISU STYLE最新号は恵比寿ガーデンプレイス内各エリアで入手することができます。また、WEB上でもご覧いただくことができます。

最新号はこちら
ページTOP