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人間の愚かさを直視する映画

 仲良しの兄弟エリックとエルマーは孤児院に入ることになった。父は自殺し、母はガンを患い、稼ぎのない叔父は頼ることができなかった。連れて行かれたのは、ヘック校長が君臨する施設だった。子供たちは、抵抗せず、口をつぐみ、幽霊でいることが生きるための唯一の方法だった。やがて、宇宙飛行士を夢見るエルマーの勇気が、子供たちに変化を起こすことになる......。

 孤児院の話である。今の時代、児童養護施設とかグループホームというのが適切かもしれない。でも本作は1967年の話。描かれているのは、赤毛のアンやオリバー・ツイストが暮らしたのと同様、貧しい「孤児院」である。厳しい規則にしばられ、鬼のような施設長が君臨するデンマークの孤児院の話だ。アンやオリバーよりもさらに過酷な、権力者による虐待、小児性愛が日常茶飯事の「地獄」が描かれる。しかもこれはフィクションではない。50年前の現実。やるせない気分になる。でも、私たちはその現実を直視しなければならない。なぜ子供たちがこんな環境にいなければならないのか。人間の愚かさを知らなければならないのだ。

 現在も孤児院はグループホームとして存在し、当時虐待を受けた子供たちは50年経った今もその傷を負い生きているという。エリックとエルマーのその後は幸せなものであったと信じたい。

 悪魔のような施設長ヘックを演じていたのはラース・ミケルセン。ドラマ『シャーロック』でも活躍するデンマークの名優だ(弟のマッツ・ミケルセンも悪役の似合う俳優)。プライベートは超愛妻家で超子煩悩。念のために。

ys51cinema_1.jpg©2016 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa International Sweden AB.

きっと、いい日が待っている [8月5日(土)公開]
監督:イェスパ・W・ネルスン
主演:ラース・ミケルセン/ソフィー・グローベル/ハーラル・カイサー・ヘアマンほか
場所:YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿三越となり)
TEL:0570-783-715 http://gardenplace.jp/cinema

文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。松本隆対談集『風待茶房』、文筆家せきしろの自伝的小説『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』を編集。マイク・ミルズの映画『20センチュリー・ウーマン』の劇場用パンフレットも編集。

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