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杉本博司から新鋭短歌、そしてかわいいパンの本。

 鎌倉時代の雷神像、アンモナイトの化石、歌うロブスターのおもちゃ等々。写真作品と自身のコレクションで構成した濃密なインスタレーションも話題の「杉本博司 ロスト・ヒューマン」展。舞台装置のような展示空間はまるで、収集家で思索家でもある杉本氏の頭の中を歩いているよう。

 そして、「これは写真なのか?」「そもそもアートとは?」と疑問がわいたら読みたいのが『アートの起源』だ。写真という枠を超えて、人類や歴史を俯瞰でとらえるアートの巨匠。その博覧強記な思考の断片に触れることができる。

 そんな杉本氏の代表作といえば、空と海で二分された風景を世界中で撮影した「海景」だ。見つめるほどに吸い込まれていく水平線。そのふしぎを31文字であらわした短歌がある。「空を買うついでに海も買いました水平線は手に入らない」。

 88年生まれの木下龍也は、短歌新世代を牽引する歌人のひとり。代表作「つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっとおしえてくれる」など、日常のすきまからパラレルな世界へと誘い込む、鮮烈な言語感覚が魅力。

 さて、袋を置き去りにして消えた菓子パンはあんぱんかメロンパンか、それともロゼッタ、キップフェル......などと覚えたての名前を列挙したくなるのが『世界のかわいいパン』。見た目はキュートだが、世界各国の代表的な76種のパンを紹介し、世界の食文化まで学べるすぐれもの。パン屋情報もあるので、秋のパン散歩のおともにもおすすめです。

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1.『アートの起源』杉本博司 新潮社 ¥2,808
2.『つむじ風、ここにあります』木下龍也 書肆侃侃房 ¥1,836
3.『世界のかわいいパン』パイ・インターナショナル ¥1,728


文・矢部智子
ライター。著書に『東京建築散歩』など。「海景」を初めて見たのは、20年近く前に訪れた直島ミュージアム。屋外に、本物の水平線と連続するよう設置された展示を観て、大人の階段をのぼった気分になりました。

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