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究極のジビエ、閉ざされた女の園、そして少女たちの青春。

 元陸軍兵士・杉元とアイヌの少女・アシㇼパが、ワケありの埋蔵金を追う冒険スペクタクルとして話題の『ゴールデンカムイ』。歴史上の人物が暗躍する壮大なストーリー、徹底した取材をもとに描かれたアイヌ文化の描写と並び、このマンガの見どころのひとつとなっているのが、「食」のシーンだ。リス、ウマ、シカ、ヒグマなど、さまざまな動物を手際よくさばき、血も骨もムダなく使い調理する究極のジビエ料理は実においしそう。生きるために、肉=命を食べる。その尊さを、アイヌの知恵が教えてくれる。

 『ゴールデンカムイ』の舞台と同じ、明治後期の北海道。函館市郊外に設立された日本初の女性修道院、それがトラピスチヌ修道院である。『天使園』は、知られざる修道院の祈りと労働の日々を、修道女が自ら美しいスケッチにしたためた作品集。厳しい生活の中で描かれたことが信じられないほどのびやかな線、明るい色彩が、人生を信仰に捧げた人々の心の豊かさを静かに物語っている。

  だが、閉ざされた世界に女性だけが集まると、穏やかでいられないのが現実というもの。『王妃の帰還』は、名門私立女子校でっひとりの美少女がクラスのトップから陥落した事件をめぐるガールズ小説。誰かを疎ましく思う自分への嫌悪。正義をふりかざす優越感。スクールカーストのリアルな実態とともに描かれる、それぞれに葛藤を抱える少女たちのあやうくもひたむきな青春が、たまらなく愛おしい。

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1. 『ゴールデンカムイ』野田サトル 集英社 ¥555
2. 『天使園「祈り、働け」の日々』亜紀書房 ¥1,944
3. 『王妃の帰還』柚木麻子 実業之日本社文庫 ¥600


文・矢部智子
ライター。著書に『東京建築散歩』『本屋さんに行きたい』など。『ゴールデンカムイ』の食事シーン。不死身と恐れられていた杉元が、目玉や脳みそをすすめられると、死んだ目になるところも見どころです!

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