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盲目の天才画家と青年の"センチメンタルな旅"。

 1960年代、ニューヨークのアートシーンを沸かせた画家がいた。アンディ・ウォーホルも一目を置いた「カミンスキー」。マティスの最後の弟子で、ピカソも絶賛。目を患い視力を失ってからは"盲目の画家"ともてはやされ、時代の寵児となった。しかし人気絶頂で表舞台から姿を消し、スイスの山奥で隠遁生活に入ってしまう。そんな彼の自伝を書こうと、無名の美術評論家ツェルナーが彼のもとを訪れた−−。

 『グッバイ、レーニン』の監督と主演が再びタッグを組んだ本作。「カミンスキー」はもちろん実在の人物ではない。冒頭、カミンスキーのフェイク・ドキュメンタリーが流れる。カミンスキーと絡んでピカソやウォーホル、ビートルズ、ウディ・アレンが登場するのが愉快。アレンの『カメレオンマン』を彷彿する。

 カミンスキーはヨボヨボでいまにも死にそう。しかしツェルナーは"盲目の画家"の真実を暴こうと必死になる。恋人に捨てられ住む家も金もない彼は、ここでヒットを出さねば未来はない。ウザさMAXでグイグイせまるツェルナーをカミンスキーはのらりくらりとかわす。だが、かつての恋人であり"永遠のミューズ"テレーゼがまだ生きていると知ると、一緒に会いに行くと言いだす。目が見えてるんだか見えてないんだかよくわからないじいさんと野心たっぷりのダメな美術評論家。凸凹コンビが友情を育むロードムービーへと展開しつつ、アート界へのオマージュと皮肉が内包されているのが面白い。

 そしてラスト、男たちの壮大なロマンが敗北し、海を眺めるじいさんと青年。女は現実に生きるからそんなものです。

ys50cinema_1.jpg©2015 X Filme Creative Pool GmbH / ED Productions Sprl / WDR / Arte / Potemkino / ARRI MEDIA

僕とカミンスキーの旅 [4月29日(土・祝)より公開]
監督・脚本:ヴォルフガング・ベッカー
原作:「僕とカミンスキー」ダニエル・ケールマン著(三修社刊)
出演:ダニエル・ブリュール/イェスパー・クリステンセン/ドニ・ラヴァンほか
場所:YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿三越となり)
TEL:0570-783-715 http://gardenplace.jp/cinema

文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。編集した松本隆対談集『風街茶房』発売中。マイク・ミルズの新作映画『20センチュリー・ウーマン』のプレス用パンフレットを編集。スチャダラパーとともにつくるインディーズ雑誌『余談』は4月15日発売。

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