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ポール・オースター原作の映画『スモーク』が蘇る。

 作家のポール・ベンジャミンはスランプに陥り小説が書けなくなっていた。ある夜、葉巻を切らせタバコ屋へ行くと店長のオーギー・レンが閉めた店を開けてくれた。そしてポールはレジ横に置かれたカメラに気づく。聞けば、毎日タバコ屋の前を撮っているという。写真を見せてもらったポールは驚く。どの写真もすべて同じ時間、同じ場所、同じ構図。20年間毎朝撮り続け、その数は4千枚以上に及んでいたーー。

 21年ぶりにデジタルリマスター版で上映されるという。とすると私がこの映画を観たのは20代の頃。12月にガーデンシネマで観たと思う。12月と覚えているのは、クリスマス時期になるとなんとなくこの映画を思い出すからだ。

 1990年のクリスマス、ポール・オースターの短編「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」がニューヨーク・タイムズ紙に掲載された。それを監督のウェイ・ワンが読んで気に入り映画化を熱望。オースター自身が脚本を書くことが決まり、短編に登場するタバコ屋の雇われ店長オーギーと、タバコ屋の常連客である作家ポールの話を膨らませたストーリーを書き下ろした。それがこの映画の背景である。

 映画を観たら(観る前でもいい)、ぜひオースターの原作を読んでほしい。村上春樹と柴田元幸それぞれの訳を収録した『翻訳夜話』がおすすめだ。

 ところで、ウェイ・ワンといえば、北野武と西島秀俊で撮った『女が眠るとき』が記憶に新しい。原作はニューヨーカー誌に掲載されたハビエル・マリアスの短編。これもスランプに陥った作家の話だった。

ys49_movie1.jpg©1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

Smoke デジタルリマスター版 [公開中]
監督:ウェイ・ワン 原作・脚本:ポール・オースター
出演:ハーヴェイ・カイテル/ウィリアム・ハートほか
場所:YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿三越となり)
TEL:0570-783-715 http://gardenplace.jp/cinema

文・辛島いづみ
フリーの編集者&ライター。スチャダラパーと一緒にインディーズ雑誌「余談」を作ったり、雑誌「GINZA」で連載中の「岡村靖幸 結婚への道」を担当したり。松本隆対談集『風街茶房』(全2巻)を編集。立東舎より1月10日に発売予定。

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