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店頭で豆アジをみつけたら「南蛮漬け、作る?」

 我が家の二人は店頭に並ぶ豆アジを目にすると「南蛮漬け、作る?」と同時に言う。南蛮漬けとは魚などを油で揚げてネギや唐辛子とともに酢漬けにした料理のこと。ワカサギや鮭、あるいは鳥の唐揚げなども、同じように作ったら「南蛮漬け」なのに、我が家では「南蛮漬け」を作るのは豆アジでなければならないという決まりがいつの間にか出来上がっている。南蛮漬け=豆アジという公式が不動の位置を占めてから、早いもので三十数年が経つ。

 南蛮漬けとの馴れ初めは住まい近くにあった「おふくろの味」が魅力のごはん屋さん。その店のお母さんが作るアジの南蛮漬けはちょっと甘くて酸っぱくて、骨まで簡単に食べられた。あの店の南蛮漬けに出会っていなかったら、私は豆アジにこれほどの親近感を抱いてなかっただろう。タレの味が染み込んだ豆アジの南蛮漬けはほんとに美味しい。

 自らも南蛮漬けを作り始めたころ、パリの食堂で「魚のエスカベッシュ」という料理を注文したことがあった。その時私はまだ、エスカベッシュがどんな料理なのかを知らず。そしてその料理を一口食べ、「あらまあこれは南蛮漬けじゃありませんか」と、なんだかとても驚いたのである。

 「南蛮」といえば外国を示す言葉。南蛮漬けの原型はヨーロッパにあるのかもという考えが生まれてもよさそうなものだったが......考えが至らなかった。ポルトガルにもスペインにもエスカベッシュと同じエスカベッチェという料理があるので、多分南欧州と関わりのある料理なのかも。

 我が家では豆アジをそのまま揚げるのだけれど、内臓は嫌、という方のことを考え、レシピは内臓などを取り除く方法にした。でもねえ。豆アジを見つけたら、内臓なども一緒に食べて欲しいなあ。ほのかな苦みを美味と感じられるのは大人の特権でしょ。ビールワイン日本酒、いずれのお供にも美味しいですわよ〜。

豆アジの南蛮漬け
作り方(4人分)
1. 昆布とかつお節のだし汁300ml、米酢100ml、日本酒大さじ2、砂糖大さじ2、醤油大さじ4をまぜてタレをつくる(市販のめんつゆに米酢をプラスしてもOK)。
2. スライスした玉ねぎ(1個分)と赤唐辛子2〜3本を1に入れる。
3. 10cm以下の豆アジ約40匹を洗い、あご部分を開いてエラを掴み、指で斜め後方に引っ張って、エラ、内臓、胸ビレ、腹ビレを取り除く(私はこの工程を省略。だから簡単)。
4. 熱いままの豆アジを2に入れて漬け込む。数時間後に食べると美味。1週間の冷蔵保存可。

こぐれ ひでこ
イラストレーター&「食」「暮らし」に関するエッセイストとして「読売新聞」「MY LOHAS/ごはん日記」などに執筆中。河津桜が満開だった頃、ワタクシ69歳になりました。レレ、レレ? 私もちゃんと本気のおばあさんになっちゃった。メ、セラヴィ(でも、それが人生)。明るく生きてくつもりです。

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